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朝鮮半島における高麗人参の歴史

高麗人参は朝鮮人参とも呼ばれ、韓国の特産品として知られています。朝鮮半島は高麗人参の原産地であり、古くから現在に至るまで高麗人参の生産や利用の中心地です。
朝鮮半島における高麗人参の歴史をご紹介します。

高麗人参の原産地は朝鮮半島付近

・「高麗」は朝鮮半島を意味する言葉
高麗人参の原産地は、朝鮮半島から中国の遼東半島にかけての地域といわれています。高麗人参は、こうした地域や中国東北部、ロシア沿海州の山林に自生している植物です。
高麗人参の「高麗」とは、10世紀から14世紀にかけて朝鮮半島を支配していた国家の名前です。高麗は、英語の「Korea」やフランス語の「Coree」の語源にもなっており、朝鮮半島地域を意味しています。

・朝鮮半島では民間薬として主に利用された
高麗人参は、古くから朝鮮半島において民間薬として利用されていました。
本格的な医学における高麗人参の利用は中国の方が早く、約2000年前に記された中国最古の薬物書『神農本草経』には、高麗人参の薬効についての詳しい記載があります。
また、これ以降の中国の薬学書にも高麗人参が主要な薬として記載されており、中国で高麗人参の利用と研究が進んでいたことが伺えます。
朝鮮半島における独自の医学は、後にこうした中国医学の知識が流入することで刺激され、発展していきます。

朝鮮の歴代王朝は高麗人参を独占

紀元前に建国された高句麗から、渤海、高麗、李氏朝鮮に至るまで、朝鮮半島を支配した各王朝は、高麗人参の採取を厳しく管理・独占しました。これらの王朝は、高麗人参を王侯貴族専用の薬草として使用したほか、中国や日本などの東アジア諸国との貿易や外交に利用しました。

698年に建国され、朝鮮半島北部を統治した渤海国から、日本の聖武天皇に対して高麗人参が贈られたという記録が残っています。
また、江戸時代には朝鮮半島から大量の高麗人参が日本に対して輸出され、年間5トン以上の銀貨が購入代金として支払われていたという記録があります。
高麗人参は、朝鮮半島の歴代国家にとって貴重な輸出品であり、国家を支える財源でした。

高句麗の時代以降に中国医学の知識が伝わる

6世紀に入ると、朝鮮半島に中国医学の知識が本格的に伝来します。
張仲景によって3世紀頃に編纂された医学書である『傷寒論』には、高麗人参の処方が20余り記されているほか、現在知られている高麗人参の薬効の多くが記載されています。
こうした中国医学の知識が伝来したことで、朝鮮半島における医学が発展し、高麗人参の薬効の理解も深まっていきました。

李氏朝鮮時代に民族医学が発展

1392年に建国された李氏朝鮮時代に入ると、朝鮮独自の医学研究が進展します。
第4代の世宗の時代には、『郷薬集成方』と『医方類聚』の2つの医学書が編纂され、1613年には『東医宝鑑』が、李朝後期には『方薬合編』が編纂されています。
これらの医学書には高麗人参の処方例が多く記載されており、『東医宝鑑』では全体の約17%、『方薬合編』の28%の処方に高麗人参が使われています。
李氏朝鮮時代に発展した朝鮮の民族医学において、高麗人参は中心的な薬として利用されていました。

18世紀初頭に高麗人参の栽培に成功

高麗人参は長い間、山林に自生しているものが採取されていました。高麗人参は発芽や栽培がとても難しく、古くから栽培法が研究され続けていました。
乱獲によって高麗人参が減少するにつれて、栽培法の研究が盛んに行われるようになり、李氏朝鮮時代の18世紀初頭にようやく栽培に成功します。
現在では、自然界の高麗人参は数が激減してほとんど採取されず、流通している高麗人参のほぼ全てが畑で栽培されたものです。

政府による高麗人参の管理と民営化

高麗人参は、歴史的に朝鮮半島にとっての特産品であり、国自体がその生産に深く関わってきました。
1899年には当時の大韓帝国が、高麗人参の保護育成を目的とした政府機関を設置します。
1908年には紅参専売法が公布され、高麗人参の栽培地の選定から収穫、加工まで一貫して政府機関が管理し、高麗人参の品質向上が行われました。1989年には国営企業の韓国煙草人参公社が設立され、1996年に専売制が廃止されるまで高麗人参の専売権を握っていました。
そして、1999年に韓国煙草人参公社が民営化され、現在の株式会社韓国人参公社が誕生しました。高麗人参を専門に扱う企業として、韓国人参公社は世界最大です。

「正官庄」のブランド化

1908年に高麗人参を専売化して以降、品質の低い類似品や偽造品が多く市場に出回るようになりました。そうした類似品に対して、本物は「正官庄(せいかんしょう)」と呼ばれるようになり、それがブランド名として定着しました。正官庄には、「まさに(正)、国の(官)、製品(庄)」という意味があります。
正官庄は、現在最も有名な高麗人参のブランドであり、世界の60カ国に輸出されています。また、韓国市場における紅参(高麗人参の高級品)の売り上げの約8割を、正官庄が占めています。

まとめ

高麗人参は、朝鮮半島が原産地です。歴代の朝鮮半島国家は高麗人参を独占し、貴重な輸出品として国家運営に利用してきました。また、李氏朝鮮時代以降、朝鮮半島では独自の医学が発展し、高麗人参が中心的な薬として利用されてきました。
20世紀末には、高麗人参を専売していた韓国の国営企業が民営化され、高麗人参を扱う世界最大の企業が誕生しました。
高麗人参の原産地である朝鮮半島は、現在も高麗人参の生産・流通の中心地であり続けています。

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