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大根島における高麗人参栽培の歴史

高麗人参は日本での栽培も行われており、日本の高麗人参の産地のひとつに島根県松江市の大根島があります。大根島での高麗人参栽培は江戸時代末期に始まり、高品質な大根島の高麗人参は「雲州人参」と呼ばれ、当時から人気を博してきました。大根島は、今も高麗人参の代表的な産地として知られています。
大根島における高麗人参栽培の歴史をご紹介します。

大根島は日本有数の高麗人参の産地

高麗人参の生産は韓国と中国で主に行われており、世界の生産量の7割以上を占めます。
高麗人参は日本でも江戸時代から栽培されており、日本の産地として有名なのが長野県東信地方、福島県会津地方、島根県松江市の大根島です。

大根島は島根県の東部に位置する火山島で、土壌はミネラルを多く含んだ水はけの良い火山灰質です。このため、高麗人参の栽培に適しており、高品質な高麗人参が収穫されることで知られています。
大根島の高麗人参は、海外で高い人気があります。地元の農協によれば、大根島の全生産量の約8割がバイヤーを介して香港市場や台湾へ輸出されており、残りの2割が主にエキスや粉末などの加工品として国内で販売されています。

大根島の名前の由来

大根島は変わった名前をしており、名前の由来には諸説あります。
出雲に伝わる神話などが記載された『出雲国風土記』(733年)には、大根島についての記載があり、大きな鷲がたこを捕らえて飛来したことにより、「たこ島」と名付けられたと書かれています。この「たこ島」が当て字によって「太根島」になり、それが「大根島」に変化したという説が有力とされています。

「高麗人参を栽培していることが広まると盗難にあうため、人参島ではなく大根島と呼ぶことにした」という説もあります。面白い説ですが、これは誤りです。
大根島での高麗人参栽培が始まったのは天保年間(1830-1843年)です。室町時代の『冷泉家文書』では既にこの島が大根島と呼ばれており、この説には無理があります。

大根島と高麗人参の歴史

大根島における高麗人参栽培の歴史をご紹介します。

・日本での栽培成功は徳川吉宗の時代
高麗人参は奈良時代に日本に伝来し、朝鮮半島からの輸入品が古くから貴重な薬草として利用されてきました。江戸幕府初代将軍の徳川家康は高麗人参の愛好者だったことが知られています。
江戸時代には高麗人参が大流行し、輸入代金として大量の銀が流出していることを懸念した江戸幕府は、高麗人参の栽培法の研究を本格化させます。長い年月の研究により、江戸幕府第8代将軍徳川吉宗の時代の1729年に、高麗人参の国内栽培が始めて成功しました。

・松江藩で高麗人参の栽培が盛んに
国内で栽培した高麗人参の種子は全国の藩に配布され、幕府によって栽培が推奨されました。
大根島がある松江藩も、幕府から高麗人参を取り扱う「朝鮮人参売座」の設置を認可されました。安永2年(1773年)には、現在の松江市に藩が運営する高麗人参畑が開墾され、盛んに生産が行われました。今も松江市には「人参方」という地名が残っています。
当時の松江藩の生産量は、産地として有名だった日光や会津藩を上回っていたといわれています。

・大根島の高麗人参栽培が始まる
松江藩によって大根島でも高麗人参畑が開墾され、天保年間(1830-1843年)から本格的に栽培が行われるようになりました。
大根島での高麗人参栽培は、藩直営の畑である「御手畑」において行われ、畑の耕作や種まき、手入れなどの労働には島民が強制的に駆り出されました。栽培の管理は限られた「御手人」が行っており、栽培法や精製方法は一般には極秘とされました。
大根島の高麗人参は、本場である朝鮮半島産の高麗人参と似ているといわれ、高品質な「雲州人参」として人気を博します。

・明治維新後に生産量が増加
明治維新の廃藩置県によって松江藩が廃止された後も、高麗人参の生産は県によって管理されていました。しかし、明治5年(1872年)に国からの命令で民営化され、明治7年(1874年)には高麗人参の自由販売が可能になりました。
その後、島をあげて高麗人参の生産が盛んに行われるようになり、明治23年からわずか5年で生産量が4倍に増加しました。その後、県下の業者を集めた「雲州人参同業組合」が発足し、島民の多くが高麗人参の生産に従事しました。
品質の高い雲州人参は海外でも人気を集め、主に当時の清国(現中国)へと輸出されました。

・現在も品質の高さで知られる雲州人参
こうした江戸末期からの島民の努力によって、雲州人参の名声は大きく高まりました。
近年では安価な中国産の台頭などによって単価が安くなり、最盛期に比べると生産農家が10分の1程度にまで減少しています。しかし、雲州人参は現在も一級品の高麗人参として人気を博しており、大根島で生産される多くの高麗人参が香港市場や台湾に輸出されています。

まとめ

日本における高麗人参の有名な産地のひとつに、島根県松江市の大根島があります。
大根島は、高麗人参の生育に適した火山灰質の土壌です。生産される高麗人参は高品質なことで知られ、雲州人参と呼ばれています。
大根島での高麗人参の生産は江戸末期から始まり、多くが海外に輸出されていました。
最盛期に比べると生産量は減少しましたが、雲州人参は一級品の高麗人参として現在も人気を集めています。

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