高麗人参で風邪とインフルエンザを予防
高麗人参は、古くから万病に効く薬草として珍重されてきました。高麗人参の学名は「Panax ginseng」といいます。「ginseng」は人参のことで、「Panax」には万能薬という意味があります。高麗人参には免疫力を高める効果があり、その名の通り、風邪やインフルエンザをはじめとした数多くの病気の予防・改善にとても効果的です。
免疫力を高めて風邪やインフルエンザの予防に役立つ高麗人参の効果について解説します。
風邪とインフルエンザの予防には免疫力が重要
・風邪やインフルエンザはウイルスの感染が原因
風邪は、ウイルスの感染によって起こる鼻や喉の急性炎症の総称です。風邪に関係するウイルスは200種類を超えるといわれています。風邪を引き起こす代表的なウイルスには、鼻風邪の原因となるライノウイルスや、夏に流行しやすいアデノウイルスなどが挙げられます。
インフルエンザは、インフルエンザウイルスを原因とする感染症です。風邪のウイルスには夏に流行するものもありますが、インフルエンザは1-3月の冬季が流行のピークです。
・予防と早期の回復には免疫力が重要
風邪とインフルエンザは、どちらもウイルスの感染によって起こります。ウイルスの感染や体内での増殖を防ぐためには、身体の免疫力を高めることが重要です。
免疫力が低下すると、ウイルスが身体に侵入しやすくなり、風邪やインフルエンザにかかるリスクが高まります。また、免疫細胞の活動が低下すると、体内でのウイルスの処理が遅れるため、病気の期間が長引きます。
風邪とインフルエンザに対する効果が実験で確認されている
高麗人参には免疫力を高める効果があり、風邪やインフルエンザの予防と症状の改善に役立ちます。風邪やインフルエンザに対する高麗人参の効果は、実験でも確認されています。
・高麗人参は感染症を防ぐ
227人の被験者に対して高麗人参のエキスを1日100mg、12週間摂取させたところ、高麗人参を含まない偽の薬を摂取させたグループに比べて、高麗人参を摂取したグループは風邪やインフルエンザに感染した人の割合が大幅に低かったとの研究報告があります。
また、この研究では、高麗人参の摂取によって主要な免疫細胞であるナチュラルキラー細胞の働きが活性化したことも報告されています。
・マウスを使った実験でも効果が確認されている
インフルエンザに感染したマウスに高麗人参のエキスを投与したところ、免疫機能に関わるタンパク質の抗ウイルス性が刺激され、気管支の炎症が抑制されたとするジョージア州立大学の研究報告があります。また、この研究では、インフルエンザによる肺の上皮細胞の損傷が高麗人参の投与によって抑えられたことも報告されています。
・鳥インフルエンザによる死亡率を低下
韓国の忠南大学校の研究において、高麗人参を投与したマウスに鳥インフルエンザウイルスを感染させたところ、高麗人参を摂取していないマウスに比べて生存率が大幅に高かったことが報告されています。こうした実験により、高麗人参には新型インフルエンザに対する効果も期待されています。
これらの実験により、風邪やインフルエンザに対する高麗人参の効果が確認されています。高麗人参は風邪やインフルエンザの感染を防ぐとともに、その症状を緩和します。
免疫力向上に役立つ高麗人参の効果
高麗人参には数多くの健康効果があり、その中には、免疫力を高めて風邪やインフルエンザの予防に役立つものがあります。免疫力を高める高麗人参の効果をご紹介します。
自律神経の調整
自律神経の働きは、免疫力と深く関係しています。高麗人参には自律神経のバランスを正常に保つ効果があり、免疫力を高めます。
・自律神経は免疫力に関係している
自律神経は、内臓機能や血圧といった身体の機能を24時間無意識のうちに調整している神経です。自律神経は、昼間や活動時に活発になる交感神経と、夜間や安静時に活発になる副交感神経に分けられ、両者がバランスをとりながら機能しています。
自律神経のバランスは免疫力と深く関係しています。交感神経が活発になると、免疫細胞のリンパ球と顆粒球のバランスが乱れ、顆粒球が過剰になることで免疫力が低下します。反対に副交感神経が過度に活発になると、リンパ球が過剰になって花粉症などのアレルギー症状が起こりやすくなります。
自律神経のバランスは、身体の免疫機能にとってとても重要です。
・高麗人参は自律神経のバランスを整える
高麗人参の高い効果の中心となる成分に、高麗人参特有の成分であるジンセノサイドがあります。ジンセノサイドには30以上の種類があり、神経の興奮を抑えるジオール系や、神経を刺激するトリオール系、抗炎症作用などがあるオレアノール系の3つに大きく分類されます。
ジオール系とトリオール系には全く逆の作用がありますが、これらは相殺されることなく体内で作用します。交感神経が過度に活発なときはジオール系が強く働いて興奮を抑え、副交感神経が過度に優位なときはトリオール系が強く作用して交感神経を刺激します。
こうしたジンセノサイドの働きにより、自律神経のバランスが正常な状態に保たれます。高麗人参は自律神経を調整することで、免疫力を高く保ちます。
ストレスの軽減
過剰なストレスは免疫力を低下させます。高麗人参にはストレスを軽減する高い効果があり、ストレスによる免疫力の低下を防ぎます。
・ストレスは免疫力を低下させる
ストレスは自律神経の交感神経を刺激します。交感神経が活発になると、免疫細胞の顆粒球が増加します。顆粒球は白血球の一種で、体外から侵入してきた細菌などを処理する作用があります。しかし、顆粒球が増えすぎると健康な細胞まで攻撃してしまい、体内組織の炎症を引き起こします。
また、顆粒球が増えるとその分リンパ球の割合が減少し、がん細胞やウイルスを処理する身体の機能が低下します。
・高麗人参はストレスを軽減する薬草
高麗人参は、古くから精神を安定させてストレスを軽減する効果のある薬草として珍重されてきました。約2000年前に記された中国最古の薬物書『神農本草経』には、高麗人参に「精神を安んじ、魂魄を定める」効果があると記載されています。
また、東洋医学における高麗人参の効果をまとめた「高麗人参七効説」においても、高麗人参の主な7つの効果のひとつとして、「養心安神(ようしんあんしん)」があるとされています。養心安神とは、神経の働きを助けて精神を安定させる効果のことです。
現代の研究でもストレスを軽減する高麗人参の効果が確認されており、ストレス性の胃潰瘍を予防・改善する効果や、ストレスによる運動能力の低下を抑制する効果などが、高麗人参を使った動物実験で明らかになっています。
・過剰なコルチゾールが免疫力を低下させる
ストレスを感じると、ストレスに対抗するためにコルチゾールと呼ばれるホルモンが分泌されます。コルチゾールには血糖値や血圧を高める作用があり、ストレスという緊急事態に対する身体の抵抗力を高めます。その一方で、コルチゾールには免疫力を低下させる作用があり、体内濃度が高すぎると風邪やインフルエンザにかかりやすくなることが知られています。
・高麗人参はコルチゾールの過剰分泌を防ぐ
高麗人参は、ストレスを軽減することでコルチゾールの分泌量を減少させます。
また、岩手医科大学が行った細胞実験により、高麗人参に含まれるジンセノサイドPPTには、コルチゾールの合成を抑制してコルチゾールの過剰分泌を防ぐ作用があることが確認されています。
高麗人参は免疫力を低下させるホルモンの分泌を抑制して、免疫力を高く保ちます。
睡眠の改善
睡眠不足は、身体の免疫力を低下させます。高麗人参には睡眠を改善する効果があり、睡眠不足による免疫力の低下を防ぎます。
・睡眠不足は免疫力を低下させる
睡眠不足の状態では風邪やインフルエンザにかかりやすくなることがよく知られています。
睡眠時には、自律神経の副交感神経が活発になります。このため、睡眠不足の状態では交感神経が過度に活発になり、免疫細胞の顆粒球の割合が増えて免疫力が低下します。
・睡眠と免疫力の関係は研究でも確認されている
アメリカの男女23,000人近くを対象として睡眠と感染症の関連を調べた調査研究が、カリフォルニア大学で行われました。その結果、睡眠時間が5時間以下のグループは、睡眠時間が7-8時間のグループに比べて、風邪の感染率が28%高く、インフルエンザなどの感染症の感染率が80%以上高かったことが明らかになっています。また、睡眠障害などによって睡眠の質が低いグループは、睡眠の質に問題がないグループに比べて、風邪の感染率が30%程度高く、感染症の感染率も2倍以上高かったことも報告されています。
免疫力を高めて風邪やインフルエンザの感染リスクを低下させるには、十分な睡眠をとることが重要です。
・高麗人参はストレスを軽減して睡眠の質を高める
ストレスを感じると、副腎皮質刺激ホルモンのコルチコトロピンが分泌されます。このホルモンはストレスに対抗するために必要ですが、その一方で睡眠を阻害する作用があります。このため、ストレスを感じると睡眠の質が低下します。
高麗人参にはストレスを軽減する高い効果があり、コルチコトロピンの分泌を抑制します。高麗人参は睡眠を阻害するホルモンの分泌量を減らして、睡眠の質を高めます。
・睡眠を改善する成分が含まれている
高麗人参には、安眠効果があることで知られるアミノ酸のグリシンとセリンが含まれています。
これらのアミノ酸を就寝前に摂取させたところ、寝つきや睡眠の途中で起きる回数、睡眠の満足度といった睡眠の質に大きな改善がみられたとの複数の実験報告があります。
高麗人参は安眠効果のあるアミノ酸を身体に補い、質の良い睡眠を促します。
抗酸化作用
免疫力を低下させる物質のひとつに活性酸素があります。高麗人参には活性酸素を中和する抗酸化作用があり、活性酸素による免疫力の低下を防ぎます。
・活性酸素は免疫力を低下させる
活性酸素は、ほかの物質を酸化する力が非常に強い酸素のことで、日々の呼吸によって体内で発生します。活性酸素は身体に不可欠な物質ですが、増えすぎると健康な細胞まで酸化してしまい、内臓や免疫機能に悪影響を与えます。
また、活性酸素には強い酸化力があり、皮膚の細胞膜に含まれる脂肪酸を酸化します。細胞膜が酸化されるとウイルスや病原菌に対する防御作用が弱まり、免疫力が低下します。
・高麗人参は活性酸素を中和する
高麗人参特有の成分であるジンセノサイドには、活性酸素を中和する強い抗酸化作用があります。また、同じく高麗人参に含まれるビタミンCにも抗酸化作用があります。
これらの成分の働きにより、高麗人参は体内の活性酸素を減少させます。抗酸化作用をもつ成分を豊富に含む高麗人参は、活性酸素による免疫力の低下を防ぎます。
抗炎症作用
高麗人参に含まれるジンセノサイドには30以上の種類があります。これらはそれぞれが特徴的な作用をもち、ジンセノサイドRo・PPT・Rh1・CKには炎症を抑制する抗炎症作用があることが確認されています。
風邪の症状は、鼻や喉の粘膜の炎症によって起こります。また、インフルエンザの症状にも鼻や喉、肺などの炎症があります。
高麗人参は、ジンセノサイドの抗炎症作用によってこうした炎症を抑制し、風邪やインフルエンザの症状緩和に役立ちます。
血行促進
・血行不良は免疫力を低下させる
身体の血行は、免疫力と密接に関係しています。
免疫細胞は血液に含まれており、体内を循環してウイルスを駆除しています。血行が悪化した状態では免疫細胞の体内循環も滞り、身体がウイルスや細菌による悪影響を受けやすくなります。
また、血行は体温にも関係しており、血行が促進されると内臓の活動が活発になって体温が上昇します。
体温は免疫力にとって重要です。体温が高まると免疫細胞のリンパ球が増えて活動も活発になり、免疫力が高まります。体温が1℃下がると免疫力が30%低下するともいわれています。
・高麗人参は血液をサラサラにする
高麗人参特有の成分であるジンセノサイドには、悪玉コレステロールや中性脂肪といった血液中の脂質を減少させる作用があります。また、タンパク質分解酵素であるプラスミンの働きを活性化して、血栓を防ぐ作用もあります。
さらに、高麗人参に豊富に含まれるアミノ酸のアルギニンには、成長ホルモンの分泌を促進する作用があり、成長ホルモンは脂質の代謝を促進します。
こうした成分の働きにより、高麗人参は血液中の脂質を減らして血液をサラサラにします。
・高麗人参は血管を広げて血行を促進する
高麗人参には、血管を拡張する成分が数多く含まれています。
アミノ酸のアルギニンとグリシンには、血管を拡張する作用があります。特にアルギニンは、体内で一酸化窒素を生成する材料になります。一酸化窒素は血管を拡張するシグナルとして機能する成分で、血行促進に欠かせません。
また、ミネラルのマグネシウムには動脈を弛緩させる作用があり、血流をスムーズにします。
さらに、カリウムには血管を収縮させるナトリウムを体外に排出する作用があります。
高麗人参はこうした成分の作用によって血管を広げ、血行を促進します。高麗人参は血行を促進することで体温と免疫力を高め、風邪やインフルエンザの予防に役立ちます。
疲労回復
身体に疲労が蓄積していると、風邪やインフルエンザにかかりやすくなることはよく知られています。疲労は自律神経のバランスを乱し、免疫力を低下させます。
高麗人参は古くから滋養強壮効果がある薬草として利用されており、疲労を回復する高い効果があります。
・疲労回復に役立つ成分が豊富
高麗人参には、疲労回復に役立つ成分が豊富に含まれています。
ビタミンB群は「代謝ビタミン」と呼ばれ、糖・脂質・タンパク質をエネルギーに変換するのに不可欠な成分です。ビタミンB群は身体へのエネルギー供給を促進するため、疲労回復に効果的な栄養素として知られています。
また、マグネシウムとカリウムには、筋肉疲労の原因となる乳酸の代謝を促進する作用があります。
高麗人参にはこれらの成分が豊富に含まれています。高麗人参は疲労回復を促進することで、免疫力の低下を防ぎます。
・疲労回復効果がドイツの委員会でも認められている
高麗人参の疲労回復効果は、ドイツの薬用植物の評価委員会であるコミッションEでも認められています。同委員会は、疲労時や衰弱時、作業能力や集中力が低下したとき、病後の回復期などの強壮剤として、高麗人参が効果的と認定しています。
体力増加
身体の健康を維持して体力を高く保つことは、風邪やインフルエンザの予防にとても重要です。体力が十分にあれば、病気の回復も早くなります。
・古くから体力増加効果が確認されていた
高麗人参は古くから体力増加に効果的な薬草として利用されてきました。東洋医学における高麗人参の効果をまとめた「高麗人参七効説」には、高麗人参の主要な効果のひとつとして「補気救脱(ほききゅうだつ)」があります。補気救脱とは、身体に元気を補って、虚脱した状態を改善する効果です。高麗人参は体力を高めて、風邪やインフルエンザを防ぎます。
・体力増加に役立つアミノ酸を含む
高麗人参に豊富に含まれているアミノ酸のアルギニンには、成長ホルモンの分泌を促進する作用があります。成長ホルモンには筋肉を増やす作用があるほか、細胞の新陳代謝を活発にして細胞を若々しい状態に保つ作用があります。
また、筋肉のエネルギー源となるグリコーゲンの生成を促進するアスパラギン酸や、筋肉の主成分となるロイシンやバリンといったアミノ酸が、高麗人参には含まれています。これらはスタミナや筋肉の増加に役立ち、体力を高めます。
・内臓の調子を整えて体力を高める
3-1.自律神経の調整、3-6.血行促進に記載の通り、高麗人参には内臓の機能を調整する自律神経を整える効果や、血行を促進する効果があります。これらの効果は内臓の健康増進に役立ち、身体を丈夫にして体力を高めます。
高麗人参は内臓を健康に保つことで、風邪やインフルエンザにかかりにくい丈夫な身体の形成に役立ちます。
腸内環境を整える
・腸内環境は免疫機能にとても重要
腸は口から摂取した食べ物を消化・吸収する臓器であり、病原菌やウイルスと頻繁に接触します。このため、腸には身体全体の6割以上の免疫細胞が集中しています。腸内環境が悪化すると、こうした免疫細胞の働きが低下して免疫機能に悪影響がでます。
また、腸の粘膜はタンパク質の層によって守られ、病原菌やウイルスの体内への侵入を防いでいます。腸内環境が悪化すると、こうしたタンパク質の防御作用が弱まり、ウイルスが体内に侵入しやすくなります。
・高麗人参は腸内環境を整える
高麗人参には腸内環境を整える効果があります。
腸の働きは自律神経によって調整されており、ストレスなどで自律神経のバランスが乱れると、下痢や便秘が起こって腸内環境が悪化します。また、血行不良は腸の動きを鈍らせ、便秘や下痢を引き起こします。
高麗人参には自律神経を整える効果や、ストレス軽減効果、血行を促進する効果があり、ストレスや血行不良による腸内環境の悪化を防ぎます。
また、高麗人参特有の成分であるジンセノサイドには抗炎症作用があり、腸の炎症を防いで腸を健康に保ちます。
高麗人参は腸内環境を整えることで免疫力を高め、風邪やインフルエンザを予防します。
肝機能を高める
肝臓は免疫機能と深く関係しています。高麗人参は肝機能を向上させることで、免疫力を高めます。
・肝臓の働きは免疫機能と深く関係している
肝臓には、免疫細胞のナチュラルキラー細胞やマクロファージが多く存在しています。肝臓には心臓から供給される血液の約4分の1が流れ込んでおり、血液中の病原菌の多くが肝臓で処理されます。肝臓の機能が衰えると、こうした免疫細胞の機能も衰えて、免疫力が低下します。
・高麗人参は肝機能を高める
高麗人参には血行を促進する高い効果があり、肝臓の活動を活発にして肝機能を高めます。
また、活性酸素によって発生する過酸化脂質は、肝臓の炎症を誘発して肝炎や肝機能低下の原因になることが知られています。高麗人参はジンセノサイドの抗酸化作用によって活性酸素を中和し、過酸化脂質による肝機能の低下を防ぎます。
さらに、高麗人参に豊富に含まれるアルギニンには、肝臓で行われるアンモニアの解毒を補助する作用があります。高麗人参は、身体にアルギニンを補って肝臓の負担を軽減し、肝臓の機能を高めます。
このように、高麗人参には肝機能の向上に役立つ成分が含まれています。高麗人参は肝機能を高めて免疫細胞の働きを活発にし、風邪やインフルエンザを防ぎます。
免疫力向上に役立つ高麗人参の成分
以上のように、高麗人参には免疫力の向上に役立つ効果が数多くあります。こうした効果をもたらす成分のほかにも、高麗人参には免疫力を高める成分が含まれています。
免疫力向上に役立つ高麗人参の成分の中から、主なものをご紹介します。
ジンセノサイド
植物には苦味のもととなるサポニンと呼ばれる成分が含まれており、高麗人参特有のサポニンがジンセノサイドと呼ばれます。ジンセノサイドは、高麗人参の高い効果の中心となる成分です。
ジンセノサイドには、抗酸化作用や自律神経のバランスを整える作用、血行促進作用などがあり、免疫力を向上させます。また、主要な免疫細胞であるナチュラルキラー細胞の働きを活性化させる作用も確認されています。
アルカロイド
高麗人参には少量のアルカロイドが含まれています。アルカロイドは「アルカリに似た化合物」という意味で、アルカリ性を示すものが多い天然由来の有機化合物のことです。アルカロイドは強い生理作用をもっており、代表例にはコーヒーに含まれるカフェインや、麻薬として知られるコカインなどがあります。
高麗人参に含まれるアルカロイドには、免疫細胞のマクロファージやB細胞の働きを活性化する作用があり、免疫力の向上に役立ちます。
なお、アルカロイドには毒性をもつものも多いですが、高麗人参に含まれるアルカロイドは少量であり、身体への悪影響の心配はありません。
ビタミンB群
ビタミンB群は糖・脂質・タンパク質の代謝に関わり、これらをエネルギーに変換するのに欠かせません。また、タンパク質の合成を補助する役割があるため、皮膚や粘膜を健康に保つ作用があります。ビタミンB群が不足すると皮膚や粘膜の炎症が起こり、皮膚の防御作用が弱まって、ウイルスや病原菌が体内に侵入しやすくなります。
さらに、ビタミンB6には免疫機能を正常に保ってアレルギー症状などを緩和する作用が確認されています。
高麗人参にはビタミンB1・B2・B6などのビタミンB群が含まれています。高麗人参はビタミンB群の働きによって皮膚や粘膜を健康に保ち、免疫機能を正常に保つことで、風邪やインフルエンザを予防します。
ビタミンC
高麗人参には、免疫力を高めることで知られるビタミンCも含まれています。
・ビタミンCは免疫力を高める
ウイルスが体内に侵入すると、ウイルスの増殖を抑制するインターフェロンが細胞から分泌されます。ビタミンCは、このインターフェロンの生成に必要な成分です。ビタミンCはインターフェロンの分泌を促進して、ウイルスの増殖を防ぎます。
また、ビタミンCは皮膚や細胞膜を構成するコラーゲンの生成にも必須です。ビタミンCはコラーゲンの生成を促進して皮膚や細胞の防御作用を高め、ウイルスの侵入を防ぎます。
・風邪を予防するビタミンCの効果は研究でも確認されている
アメリカの研究グループは、スウェーデンの男女1,509名を対象とした追跡調査を行い、ビタミンCの摂取と風邪のリスクの関連を調べる研究を行いました。その結果、食事からのビタミンC摂取が多い女性は、ビタミンCの摂取が少ないグループと比べて、風邪の罹患率が31%低いという結果が得られています。また、ビタミンCなどを含むサプリメントを摂取した男性には、風邪の予防効果がみられたことも報告されています。
高麗人参は、こうした免疫力を高めるビタミンCを身体に補い、風邪やインフルエンザを予防します。
アミノ酸
免疫機能を支える免疫細胞や抗体は、アミノ酸で構成されるタンパク質でできています。このため、アミノ酸を極端に制限したダイエットは免疫力を低下させることが知られています。
高麗人参には、タンパク質のもととなるアミノ酸が含まれており、その中でもアルギニンが豊富です。アルギニンには、身体に侵入したウイルスや病原菌を処理するマクロファージの働きを活性化する作用があります。
高麗人参は免疫機能に重要なアミノ酸を身体に補い、免疫力を高めます。
亜鉛・鉄・銅
高麗人参には、亜鉛・鉄・銅といったミネラルも豊富に含まれています。
亜鉛は、細胞分裂に関わる200以上の酵素に含まれる成分で、免疫細胞の生成にも欠かせません。亜鉛が不足すると免疫細胞をつくる胸腺が縮小し、免疫不全を引き起こします。亜鉛の摂取は正常な免疫機能に不可欠です。
鉄は赤血球の主成分であり、免疫機能にも深く関係しています。鉄が不足すると免疫細胞のT細胞が減少し、リンパ球の機能も低下します。
銅は、免疫細胞のエネルギー代謝に関わる酵素の構成成分です。銅が欠乏するとT細胞が減少するほか、白血球の減少や殺菌能力の低下が起こります。
高麗人参は、免疫機能に重要な亜鉛・鉄・銅を身体に補い、免疫力を高めて風邪やインフルエンザの予防に役立ちます。
高麗人参は免疫力を高める漢方薬の材料
高麗人参は、古くから漢方薬の材料として利用されてきました。身体の調子を整えて免疫力を向上させる漢方薬の材料として、高麗人参は現在も広く利用されています。
こうした漢方薬には、体力増加と血行促進に役立つ「人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)」や、胃腸の調子を整える「人参湯(ニンジントウ)」、身体のほてりや喉の乾きに効く「白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)」など数多くの種類があります。
これらの漢方薬に広く利用されていることからも、高麗人参に免疫力を高めて風邪やインフルエンザを防ぐ高い効果があることが分かります。
高麗人参は続けることが大事
免疫力を高める高麗人参の効果は、身体の調子を整えながらゆっくりと作用します。このため、短期間の摂取では効果を実感しにくく、長期間継続的に摂取してこそ、高麗人参の高い効果が発揮されます。
風邪やインフルエンザを防ぐには、日々の予防と生活習慣が重要です。免疫力を高める効果を十分に得るために、高麗人参の継続的な摂取をお勧めします。
まとめ
風邪やインフルエンザはウイルスの感染によって発症するため、これらの予防には身体の免疫力を高めることが重要です。高麗人参には自律神経のバランスを調整する効果や、ストレスを軽減する効果、活性酸素を中和する効果など、免疫力の向上に役立つ数多くの効果があります。また、高麗人参にはジンセノサイドやビタミン、アミノ酸、ミネラルといった、免疫機能に重要な栄養素が豊富に含まれています。
風邪やインフルエンザの予防には、普段から身体の調子を整えて免疫力を高く保つことが重要です。免疫力の向上に役立つ数多くの健康効果をもつ高麗人参を、日々の生活に取り入れてみることをお勧めします。