高麗人参の栽培に適した土壌
高麗人参は栽培がとても難しい植物です。また、高麗人参は生育の際に土地の栄養素を根こそぎ吸い取ってしまうといわれています。このため、高麗人参の栽培では土づくりが最重要といわれています。
高麗人参の栽培に適した土壌とは、どういったものなのでしょうか。
土壌が高麗人参の質を左右する
高麗人参を栽培する土壌の状態は、高麗人参の生育に大きな影響を与えます。
・高麗人参の栽培では土づくりが最重要
高麗人参は栽培がとても難しい植物であり、栽培に適した土壌でなければ順調に生育しません。このため、高麗人参の栽培では事前の土づくりが最も重要とされています。
昼夜の気温差・降雨量の少なさなどの気候条件や、標高の高さなども高麗人参の生育に深く関係しているといわれています。しかし、日本の産地のひとつである大根島は、こうした気候条件を満たしていません。
大根島のある島根県は降雨量が多く、大根島はその名の通り標高が低い島です。その一方で、大根島の土壌はミネラルを豊富に含んだ水はけの良い火山灰質であり、高麗人参の栽培に適しています。
大根島産の高麗人参は雲州人参と呼ばれ、高品質な高麗人参として古くから人気を集めています。こうした事例からも、高麗人参の栽培には土壌の質が最重要であることがわかります。
・土壌によって高麗人参の成分量が異なる
土壌の性質は、高麗人参の生育の速さや根の大きさだけでなく、含まれる有効成分の数や量にも影響します。
高麗人参の有効成分のひとつにジンセノサイドがあります。ジンセノサイドには多くの生理作用があり、高麗人参の高い健康効果や美容効果の中心となる成分です。
ジンセノサイドの含有量を産地別に調べたところ、中国産の高麗人参には14種類のジンセノサイドが含まれていたのに対して、韓国の有名な産地で生産された高麗人参には38種類含まれていたという調査報告があります。
こうした調査からも、土壌の良し悪しが高麗人参の質に大きな影響を及ぼすことが確認されています。高品質な高麗人参を生産するためには、高麗人参に適した土壌で栽培することが重要です。
高麗人参の栽培に適した土壌とは
高麗人参の栽培に適した土壌の条件をご紹介します。高麗人参は栽培が難しい植物として知られ、高品質な高麗人参を育てるにはこうした条件を満たす必要があります。
水はけが良い
高麗人参はもともと山の斜面に自生していた植物であり、生育には水はけの良さがとても重要です。高麗人参の産地の多くは山の多い地域であったり、水はけの良い火山灰質の土壌だったりします。
高麗人参の栽培に適した土壌水分は50-60%といわれており、降雨量が多い梅雨や雪の時期でもこの水分量が保たれている必要があります。
弱酸性
高麗人参は、pH 4.5-5.8程度の弱酸性の土壌を好みます。pH6.5以上になると生理障害が生じてうまく育ちません。このため、アルカリ性の肥料は使用できません。
栄養素が豊富
高麗人参は、生育の際に土地の栄養素を根こそぎ吸い取ってしまうといわれています。有効成分を多く含んだ高麗人参を育てるには、土壌にミネラルなどの栄養素が豊富に含まれていることが重要です。
このため、高麗人参を栽培する前には、1-3年程度かけて土づくりが入念に行われます。
高麗人参畑の土づくりでは、青草や堆肥などの有機物を混ぜて、深さ45cm程度の深さまで年に10回以上耕します。畑でトウモロコシなどを育てておき、それを土に混ぜて肥料にする方法もよく行われています。また、長野県では骨粉や鶏糞などのミネラルの多い肥料が使われる場合もあります。
病原菌や害虫が少ない
高麗人参は、病気や害虫にとても弱いことで知られています。また、農薬も苦手としています。
高麗人参の栽培には、病原菌や害虫が少ない土壌であることが重要です。このため、種をまく前に畑が何度も耕され、日光で土壌の消毒が行われます。こうした作業を怠ると、病気や害虫によって収穫前に高麗人参が枯れてしまいます。
土壌の消毒には、殺菌剤であるクロルピクリン(商品名:ドロクロール、ドジョウピクリンなど)が使用される場合もあります。
高麗人参に適した菌根菌が生息している
高麗人参の生育には、菌根菌と呼ばれる土壌の細菌が深く関係しています。
菌根菌とは、植物の根に侵入して共生体である菌根をつくり、植物と共生する菌類のことです。菌根菌は、土壌の窒素やリン酸を吸収して宿主である高麗人参に供給します。このため、菌根菌の働きは高麗人参に含まれる有効成分の量と深く関係しています。
産地によって高麗人参に含まれるジンセノサイドの種類や量が異なるのは、土壌の菌根菌の差が大きく影響していると考えられています。古くからの高麗人参の産地には、高麗人参の生育に役立つ菌根菌が多く存在しており、高品質な高麗人参の生産を補助しています。
高麗人参の栽培に適した気候条件
以上のような土壌の条件だけでなく、高麗人参の栽培には気候条件が適切であることも大切です。大根島という例外もあり、土壌ほど影響力は大きくありませんが、気候条件も高品質な高麗人参の栽培に重要と考えられています。
・高麗人参に適した気候
高麗人参の自生地は、中国東北部や朝鮮半島北部を中心とした比較的寒冷な地域です。標高は200mから1,000m程度が多く、降水量が1,200mm前後の地域が適しているといわれています。
寒冷で昼夜の寒暖差が大きい気候を好みますが、寒すぎても枯れてしまいます。高麗人参に適した気温は、年平均0.9-13.8℃程度、夏の平均気温が20℃-25℃程度とされています。
・高麗人参は強い日差しを嫌う
高麗人参は、もともと直射日光が届きにくい山の中に自生していた植物です。このため、高麗人参は直射日光に弱く、特に夕日に弱いとされています。畑で栽培する場合は、日よけの設置が欠かせません。
高品質な高麗人参の栽培には、こうした気候条件や日差しの条件を満たすことも重要です。
まとめ
高麗人参の栽培に適した土壌の条件には、水はけの良さや栄養素の豊富さなどがあります。高麗人参の有名な産地は、こうした条件を満たしています。
土壌の質は、高麗人参の根の大きさや有効成分の量に大きな影響を与えます。高品質な高麗人参を栽培するためには、高麗人参に適した土を準備する土づくりが最も重要です。このため、土づくりには1-3年程度の期間と多くの労力がかけられています。
高麗人参の高い健康効果や美容効果は、こうした地道な土づくりの努力によってもたらされています。