胃腸を強くする高麗人参
胃腸は、食事を消化して栄養素を吸収する働きをもつ重要な臓器です。このため、胃腸は健康のバロメーターといわれます。古くから身体の健康増進に効果的な薬草として珍重されてきた高麗人参には、胃腸の健康に役立つ高い効果があります。胃腸を丈夫にする高麗人参の効果について解説します。
古くから胃腸に効果的とされた高麗人参
高麗人参は、古くから胃腸の働きを助ける薬草として珍重されてきました。約2000年前に記された中国最古の薬物書である『神農本草経』には、高麗人参に「五臓を補う」効果があると記載されています。また、この書物では高麗人参は最高ランクの「上薬」とされ、長く摂取しても身体に害のない養命薬であると紹介されています。
さらに、東洋医学における高麗人参の効果をまとめた「高麗人参七効説」では、高麗人参に「健脾止瀉(けんぴししゃ)」の効果があるとされています。「脾」とは胃腸と脾臓のことで、止瀉は下痢止めのことです。高麗人参は、古くから胃腸を健康にする薬草として利用されてきました。
血行を促進して胃腸の働きを活発にする
高麗人参には血行を促進する効果があります。血行は内臓の機能と深く関係しており、血行を促進する高麗人参は胃腸の健康増進に役立ちます。
血行は胃腸の健康に重要
血行と胃腸の働きは深く関係しています。食べ物の消化・吸収には大量の血液が必要になり、食事をとると胃腸に血液が集中します。食べた後に眠くなるのは、この影響で脳の血流量が減少するためです。胃腸の血行悪化は消化不良を招き、胃腸炎などの原因になります。
また、胃腸の血行が促進されると新陳代謝が活発になり、胃壁や腸壁の粘膜の生成が促進されて、胃腸が丈夫になります。
高麗人参は血行を促進する
高麗人参には、血行促進に役立つ成分が豊富に含まれています。
・血管を拡張する成分が豊富
高麗人参にはアミノ酸のアルギニンが豊富に含まれており、アルギニンは体内で一酸化窒素を生成する材料になります。一酸化窒素には血管周辺の筋肉を弛緩させる作用があり、血管を拡張するシグナルとして機能する物質です。
また、同じく高麗人参に含まれるアミノ酸のグリシンやミネラルのマグネシウムにも、血管を拡張する作用があります。
これらの成分の働きにより、高麗人参は血管を拡張して血流をスムーズにします。
・血液をサラサラにする
高麗人参特有の成分であるジンセノサイドには、悪玉コレステロールや中性脂肪といった血液中の脂質を減少させる効果があります。また、ジンセノサイドにはタンパク質分解酵素であるプラスミンの働きを活性化する作用があります。プラスミンには血栓を溶かす働きがあるため、ジンセノサイドは血液を固まりにくくします。
こうしたジンセノサイドの作用により、高麗人参は血液をサラサラにします。
・活性酸素を中和して血行悪化を防ぐ
血行を悪化させる物質のひとつに活性酸素があります。
活性酸素は、ほかの物質を酸化する力が非常に強い酸素のことで、日々の呼吸によって体内で発生します。活性酸素は血管を拡張する一酸化窒素と反応して、その効果を失わせてしまいます。このため、体内の活性酸素が過剰になると血管が拡張しにくくなり、血行が悪化します。
高麗人参の有効成分ジンセノサイドには強い抗酸化作用があり、増えすぎた活性酸素を中和します。高麗人参は活性酸素の悪影響から一酸化窒素を守り、胃腸の血行を促進します。
内臓の機能に重要な自律神経を整える
高麗人参には、自律神経の働きを正常に保つ効果があります。自律神経は内臓の機能と深く関係しており、高麗人参の効果は胃腸を丈夫にします。
・自律神経は胃腸の機能を調整している
自律神経は、内臓や血管などの身体の機能を24時間無意識のうちに調整している神経です。自律神経は、活動時や昼間に活発になる交感神経と、休息時や夜間に活発になる副交感神経に分けられ、両者がバランスをとりながら機能しています。
自律神経のバランスが乱れると、身体のあらゆる機能に影響が及びます。胃腸に関しては消化・吸収・排泄などが正常に行われなくなり、消化不良や胃腸炎、便秘、下痢などが起こります。
・ジンセノサイドは自律神経を整える
高麗人参特有の成分であるジンセノサイドには、30以上の種類があります。これらは神経の興奮を抑えるジオール系や、神経を刺激するトリオール系、抗炎症作用や免疫力を高める作用があるオレアノール系の3つに大きく分類されます。
ジオール系とトリオール系は相反する効果をもっていますが、これらの効果は相殺されずに体内で作用します。交感神経が過度に活発な状態ではジオール系が強く働いて交換神経の興奮を抑え、副交感神経が優勢な状態ではトリオール系が強く働いて交感神経を刺激します。
こうした働きにより、ジンセノサイドは自律神経のバランスを調整します。
・高麗人参は自律神経を整えて胃腸を健康に保つ
自律神経の乱れによって起こる代表的な胃腸の症状としては、神経性胃炎や過敏性腸症候群があります。
神経性胃炎は、胃の機能を調整する自律神経が乱れ、胃酸が過剰に分泌されることによって起こります。また、自律神経の乱れによって腸のぜん動運動が乱れると、強い腹痛と慢性的な下痢・便秘を伴う過敏性腸症候群が起こります。
高麗人参に豊富に含まれるジンセノサイドには、自律神経を正常に保つ作用があります。高麗人参は自律神経を整えることで神経性胃炎や過敏性腸症候群を防ぎ、胃腸を健康な状態に保ちます。
ストレスを軽減して胃腸を丈夫にする
ストレスは胃腸の健康状態を悪化させます。高麗人参にはストレスを軽減する効果があり、ストレスから胃腸を守ります。
ストレスは胃腸に悪影響を与える
ストレスが胃腸に悪影響を与えることはよく知られています。ストレスは交感神経を刺激して自律神経のバランスを乱すため、便秘や下痢、神経性胃炎や過敏性腸症候群といった胃腸の不調の原因になります。
また、ストレス状態が続くと胃粘膜の抵抗力が悪化し、胃がんなどの原因となるピロリ菌の活動が活発になります。このため、ストレスは胃がんや胃潰瘍のリスクを高めます。
高麗人参はストレスを軽減する
・古くから精神を安定させる効果が確認されていた
約2000年前に記された中国最古の薬物書である『神農本草経』には、高麗人参の効果として「精神を安んじ、魂魄を定める」効果があると記されています。
高麗人参は、古くから精神を安定させる効果やストレスを軽減する効果がある薬草として珍重されてきました。
・ストレス軽減効果は実験でも確認されている
ストレスを軽減する高麗人参の効果は、現代の研究でも確認されています。
東京大学の研究において、強制的に運動させたネズミに対して高麗人参を投与する実験が行われました。その結果、高麗人参の摂取によって、ストレスによる運動能力の低下が顕著に抑制されたという実験結果が得られています。
また、高麗人参にはストレスに対抗するためのホルモンの分泌を促進する効果があるとする研究報告が、1963年にブルガリアの医学研究所によって行われています。
高麗人参は胃腸を正常に保つアダプトゲン
高麗人参は代表的なアダプトゲンとして知られています。アダプトゲンとは、心身のストレスを軽減する作用があり、標準値から外れた身体の機能を正常な状態に戻す作用のある薬草のことです。高麗人参以外のアダプトゲンとしては、甘草、マカ、アマチャヅルなどが知られています。
高麗人参にはストレスを軽減する高い効果があるほか、ジンセノサイドの働きによって自律神経のバランスを整え、身体の機能を正常に保ちます。このため、高麗人参はアダプトゲンの中でも効果が高い代表例とされています。
高麗人参は身体の機能を正常に保つアダプトゲンとして機能し、胃腸の状態を正常に保ちます。
胃腸の炎症を抑える
高麗人参特有の成分であるジンセノサイドには30以上の種類があり、そのうちジンセノサイドCK・Rh1・PPT・Roなどには、炎症を抑える抗炎症作用があります。このため、高麗人参には胃腸の粘膜の炎症を予防・改善する効果があります。
高麗人参はジンセノサイドの働きによって胃腸炎を防ぎ、胃腸の状態を健康に保ちます。
腸内の善玉菌を増やす
人間の腸の中には、9,000兆個もの腸内細菌が存在しているといわれています。腸内細菌には、アンモニアや硫化水素などを発生させる悪玉菌や、悪玉菌を減らす働きのある善玉菌などがあります。
善玉菌の代表例としてヨーグルトなどに含まれている乳酸菌が知られています。乳酸菌には、腸内を酸性にして悪玉菌を減らし、腸内環境を整える働きがあります。
高麗人参には、血行促進効果やストレス軽減効果、自律神経のバランスを整える効果があります。このため、高麗人参には腸の動きを活発にして腸内環境を整え、乳酸菌などの善玉菌を増やす効果があります。
高麗人参は腸内の善玉菌を増やして、腸を健康に保ちます。
ピロリ菌の除菌率を高める
・胃腸炎の原因となるピロリ菌
胃腸炎の主要な原因のひとつに、ピロリ菌があります。
ピロリ菌は、胃酸によって強い酸性になっている胃の中でも生息できる細菌で、慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの原因になります。また、世界保健機関(WHO)の外部組織である「国際がん研究機関(IARC)」によれば、胃がんの8割はピロリ菌が原因で発症しています。
さらに、ピロリ菌は胃の状態を悪化させるため、胃から発生する強い口臭の原因になります。
・高麗人参はピロリ菌の除菌に役立つ
ピロリ菌の除菌には、複数の抗菌薬と胃酸を抑える薬が使用されます。除菌療法は必ず成功するわけではなく、薬を正しく飲んでも初回の除菌成功率は75%程度といわれています。
高麗人参にはピロリ菌の除菌率を高める効果があることが、研究で確認されています。
ピロリ菌の除菌薬とともに高麗人参のエキスを摂取させたところ、ピロリ菌の除菌率が向上したとの研究報告が、プロバイオティクスシンポジウムや日本ヘリコバクター学会学術集会で発表されています。
胃腸を強くする効果は実験でも確認されている
胃腸の健康維持に役立つ高麗人参の効果は、大学などでの研究でも確認されています。
・胃潰瘍を抑制する効果
愛媛大学医学部の研究において、電気ショックを与えてストレス性の胃潰瘍を誘発させたラットに対して高麗人参を投与する実験が行われました。その結果、高麗人参の成分を投与したラットは胃潰瘍の発生が抑制され、潰瘍症状の回復も促進されたという実験結果が得られています。
また、富山大学和漢研究所におけるラットを使った同様の研究や、雄猫を使った近畿大学の研究でも、胃潰瘍を抑制する高麗人参の高い効果が確認されています。
・腸の健康に役立つ効果
高麗人参の胃腸に与える影響を調べるため、胃腸の運動をX腺で確認する実験が行われました。その結果、高麗人参を1ヶ月間続けて摂取させたグループは、摂取していないグループに比べて腸の内容物の移動が早かったことが報告されています。この実験により、腸の働きを活発にする高麗人参の効果が明らかになっています。
また、便秘を解消する高麗人参の高い効果が、多くの臨床研究によって確認されています。
高麗人参は胃腸を強くする漢方薬の材料
高麗人参は古くから漢方薬として利用され、現在でも胃腸を健康にする漢方薬の材料として広く利用されています。
高麗人参を使った主な漢方薬には、人参湯(にんじんとう)・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)・桂枝人参湯(けいしにんじんとう)があります。これらの漢方薬には、胃腸炎や胃腸虚弱、下痢などの胃腸の不調を改善する効果があります。
こうした胃腸に効く漢方薬に古くから利用されていることからも、高麗人参に胃腸を健康にする高い効果があることが分かります。
胃腸を健康にする高麗人参は美容にも役立つ
胃腸の健康は、美容にも深く関係しています。
胃腸が健康になることで、美容に重要なビタミン・ミネラル・アミノ酸などの栄養素の消化・吸収がスムーズに行われます。
また、腸内の悪玉菌が増えると便秘や下痢が起こり、肌の健康に悪影響を与えるアンモニアや硫化水素などの毒素が多く発生します。腸内環境を整える高麗人参は、腸内での毒素の発生を抑制して、美容にも好影響を与えます。
飲み始めに一時的に胃腸の不調が起こる場合がある
高麗人参は胃腸の健康に役立つ高い効果があります。しかし、高麗人参を飲み始めた際に、一時的に胃の不快感や下痢などの胃腸の不調が起こる場合があります。
・飲み始めの不調は好転反応
こうした一時的な体調不良は「好転反応」と呼ばれ、身体が回復に向かう過程で起こる身体の正常な反応です。身体が良くなる過程で起こるため、好転反応と呼ばれます。
漢方医学では、漢方薬を飲み始めた際にこうした反応が起こることがあるという考え方が一般的です。
・好転反応は毒素を排出する過程で起こる
高麗人参を飲み始めると、血行が促進されて身体に蓄積していた毒素が排出されやすくなります。毒素は体外に排出されるまでの間、血液に溶けて身体の中を循環するため、一時的に血液中の毒素の濃度が高まります。こうした一時的な毒素の増加が、好転反応と呼ばれる体調不良を引き起こします。
・好転反応は短期間で治まる
一時的に上昇した血液中の毒素が体外に排出されると、体調不良は治まります。このため、好転反応は1-2週間程度の短期間で終わる場合が多く、過度に心配する必要はありません。
もし症状が重い場合は、摂取量を少なくするか、一時的に摂取を中断して、症状が治まってから摂取を再開すると良いでしょう。
なお、症状が長期間続く場合は、別の原因で体調不良が起こっている可能性もあるため、医師に相談するようにしてください。
まとめ
高麗人参は古くから胃腸の健康に効果的な薬草として利用されてきました。高麗人参には血行促進効果・ストレス軽減効果・自律神経を整える効果などがあり、胃腸の健康増進にとても効果的です。また、胃炎や胃がんの原因となるピロリ菌に対する効果や、善玉菌を増やして腸内環境を整える効果もあります。
日々の生活や仕事のストレスなどによって、胃腸の健康を悪くする人が増えています。胃腸の健康増進に役立つ高麗人参を、日々の生活に取り入れてみることをお勧めします。