高麗人参の栄養素
高麗人参は、古くから貴重な薬草として珍重されてきました。高麗人参には特有の成分であるジンセノサイドや、アミノ酸、ビタミン、ミネラルなどが含まれており、これらの成分の働きによって高い健康効果や美容効果が発揮されます。高麗人参に含まれる栄養素について解説します。
ジンセノサイド
高麗人参の高い健康効果や美容効果の中心となる栄養素が、サポニンの一種ジンセノサイドです。
ジンセノサイドとは
ジンセノサイドは、高麗人参に含まれるサポニンの一種です。さまざまな原子と糖が結合した化合物を配糖体といい、サポニンは植物の根・茎・葉などに広く含まれる配糖体です。
サポニンには水に溶けると泡立つ性質があり、ラテン語で石鹸を意味する「saponem」が語源です。また、サポニンには強い苦味があり、ジンセノサイドは高麗人参の苦味のもとになっている成分です。
高麗人参に含まれる特有のサポニンがジンセノサイド(Ginsenoside)と呼ばれます。これは高麗人参(ginseng)に含まれる配糖体(glycoside) という意味です。
ジンセノサイドの種類
ジンセノサイドには30以上の種類があります。ジンセノサイドは種類によって作用が異なり、中枢神経の興奮を抑えるジオール系、中枢神経を刺激するトリオール系、抗炎症作用などがあるオレアノール系の3つに大別されます。
こうした多くの種類のジンセノサイドがバランスをとりながら体内で作用し、高麗人参の健康効果や美容効果が発揮されます。
ジンセノサイドを含む高麗人参はアダプトゲンとして作用する
ジオール系とトリオール系は相反する効果をもっていますが、これらの効果は相殺されずに作用します。神経が興奮しているときはジオール系が強く作用して興奮を抑え、神経の働きが鈍っているときにはトリオール系が強く作用して神経を刺激します。このため、ジンセノサイドには神経の働きを正常な状態に保つ作用があります。
神経の働きは内臓や血液の流れにも深く関係しています。神経の働きを正常に保つジンセノサイドには、内臓の機能や血圧を正常化する作用があります。
こうしたジンセノサイドの働きにより、高麗人参は代表的な「アダプトゲン」として知られています。
アダプトゲンとは、精神的・肉体的ストレスを軽減する働きをもち、正常値から外れた身体の機能を正常な状態に戻す作用のある薬草のことです。
高麗人参は、特有成分であるジンセノサイドの働きによって、身体を健康な状態に保ちます。
ジンセノサイドはバランスが重要
ジンセノサイドは、ジオール系やトリオール系が体内でバランスをとりながら作用します。このため、身体を正常に保つジンセノサイドの効果を効率的に得るには、ジオール系とトリオール系が同程度含まれている高麗人参を摂取するのが理想的です。
高麗人参の実や葉にも、ジンセノサイドが含まれています。しかし、これらにはトリオール系が多く含まれる一方で、ジオール系は少量です。このため、高麗人参の実や葉は、一般的には薬草として利用されていません。
ジンセノサイドがバランス良く含まれているのが、古くから利用されてきた根の部分です。また、若い1年根や2年根に含まれるジンセノサイドはジオール系の比率が大きく、栽培年数が増えるとともにトリオール系の比率が増えていきます。高麗人参の最高級品とされる6年根は、最も多くのジンセノサイドを含むとともに、ジオール系とトリオール系のバランスが最も優れています。
ジンセノサイドの効果
ジンセノサイドには、ストレス軽減効果や神経の働きを正常に保つ効果のほかにも、数多くの効果があります。
抗酸化作用
ジンセノサイドには、活性酸素を中和する強い抗酸化作用があります。
活性酸素は強い酸化力をもった酸素のことで、日々の呼吸によって体内で発生します。活性酸素は病原菌の処理などに使用される身体に不可欠な物質ですが、体内で過剰になると正常な細胞や組織まで酸化してしまい、老化や内臓の炎症などの原因になります。
ジンセノサイドには増えすぎた活性酸素を中和する抗酸化作用があり、活性酸素の悪影響から身体を守ります。
活性酸素は肌の細胞を酸化させて老化を促進するとともに、色素を生成する肌のメラノサイトを刺激して、シミやソバカスの原因になります。活性酸素を減らすジンセノサイドの抗酸化作用は、美肌にも効果的です。
脂質の代謝促進
ジンセノサイドには、脂質の代謝を促進する効果があります。このため、高麗人参を摂取すると悪玉コレステロールや中性脂肪といった血液中の脂質が減少して、血液がサラサラになります。また、脂肪が燃焼されやすくなるため、高麗人参はダイエットにも役立ちます。
血行促進
ジンセノサイドは血液中の脂質を減らして血液をサラサラにするとともに、血栓を防いで血流をスムーズにする作用があります。
血行が促進されると、身体の組織への酸素と栄養素の供給が十分に行われ、老廃物の体外への排出が促進されます。このため、血行促進効果をもつジンセノサイドは、内臓の活動を活発にして内臓の機能を高めます。内臓の機能が活発になると体温が上昇するため、ジンセノサイドは冷え性や肩こりの改善にも効果的です。
免疫力の向上
ジンセノサイドには、主要な免疫細胞であるナチュラルキラー細胞の働きを活性化する作用があります。このため、高麗人参は免疫力を高めます。
また、増えすぎた活性酸素は免疫力低下の原因にもなります。活性酸素は細胞膜を構成する脂質を酸化させて、細胞膜を弱くします。細胞膜が酸化されると、病原菌やウイルスが体内に侵入しやすくなり、免疫力が低下します。
抗酸化作用をもつジンセノサイドは活性酸素から細胞膜を守り、免疫力の低下を防ぎます。
抗炎症作用
ジンセノサイドには、皮膚や粘膜などの炎症を抑える抗炎症作用があります。このため、高麗人参は皮膚炎や鼻炎などのアレルギー症状の緩和や、肝炎や胃腸炎といった内臓の炎症の予防・改善に役立ちます。
そのほかの効果
以上に挙げた効果のほかにもジンセノサイドには数多くの効果があり、血糖値の過度な上昇を抑制する効果や、ホルモンの分泌を促進する効果、腫瘍細胞の増殖を抑える効果などが確認されています。
ジンセノサイドは、高麗人参の健康効果や美容効果の鍵となる重要な栄養素です。
アミノ酸
高麗人参には、ジンセノサイド以外にも身体に役立つ栄養素が含まれています。そのうちのひとつが、タンパク質を構成するアミノ酸です。
アミノ酸は筋肉や内臓組織、髪、爪などを構成する成分です。身体の機能に重要な酵素も、アミノ酸で構成されたタンパク質でできています。アミノ酸は、丈夫な身体の形成や正常な身体の機能に欠かせません。
特にアルギニンが豊富
高麗人参には、アミノ酸のなかでも特にアルギニンが多く含まれています。
アルギニンには、成長ホルモンの分泌を促進する作用や、免疫細胞であるマクロファージの働きを活性化して免疫力を高める作用があります。また、有害物質であるアンモニアの解毒を促進する作用もあり、解毒に関わる肝臓の働きを助けます。
さらに、アルギニンには血行を促進する高い効果があります。アルギニンは体内で一酸化窒素を生成する材料になり、一酸化窒素には血管を拡張する作用があります。
アルギニンは、男性機能の向上に効果的な成分としても知られています。
男性器は、海綿体に血液が流れ込むことによって機能します。このため、血行促進効果のあるアルギニンは、男性機能を向上させます。ED(勃起不全)患者にアルギニンを継続的に摂取させたところ、男性機能が改善したという研究報告もあります。
高麗人参は多くのアミノ酸を含む
高麗人参には、アルギニン以外のアミノ酸も含まれています。
チロシンは脳で機能する神経伝達物質の材料になり、うつ症状の改善やストレス軽減に効果的です。
アラニンには、アルコールの分解を助ける作用や、肝臓の再生を促進する作用があり、肝臓の機能を高めます。
アスパラギン酸には、疲労のもとになる乳酸の分解を助ける作用があり、疲労回復を促進します。また、尿の合成を促す作用があるため、アンモニアなどの有害物質の体外への排出を助けます。
グルタミン酸には、脳の機能を活性化する作用や、脂肪の蓄積を抑える作用があります。
高麗人参にはこれらのアミノ酸が含まれており、身体の健康増進にとても効果的です。
水溶性ビタミン
高麗人参には、水に溶けやすい性質をもった水溶性ビタミンが豊富に含まれています。水溶性ビタミンには、ビタミンB群とビタミンCがあります。
ビタミンB群
高麗人参には、ビタミンB群が豊富です。ビタミンB群は「代謝ビタミン」と呼ばれ、糖・脂質・タンパク質といった栄養素をエネルギーに変換するのに不可欠な成分です。ビタミンB群はこれらの栄養素を効率的にエネルギーに変換し、栄養素が脂肪となって身体に蓄積するのを防ぎます。
ビタミンB1は糖の代謝に深く関わり、脳へのエネルギー供給にかかせません。このため、ビタミンB1は栄養不足による脳機能の低下を防ぎます。ビタミンB1が不足すると、神経の炎症が起こりやすくなるともいわれています。
ビタミンB2やビタミンB6には、皮膚や粘膜を健康に保つ働きがあります。これらは口内炎などの炎症や、肌荒れの予防・改善に役立ちます。
ビタミンB群に分類される葉酸やビタミンB6には、赤血球の生成を促進する作用があります。これらのビタミンは貧血の予防・改善にとても効果的です。
高麗人参には、こうした健康や美容に役立つビタミンB群が豊富に含まれています。
ビタミンC
高麗人参には、多くの健康効果や美容効果をもつビタミンCが含まれています。
ビタミンCには増えすぎた活性酸素を中和する抗酸化作用があり、肌を老化させる活性酸素の悪影響を防ぎます。ビタミンCにはメラニン色素の沈着を防ぐ働きもあるため、シミやソバカスの予防にも役立ちます。ビタミンCは、美しい肌の形成を助けます。
また、ビタミンCは、ウイルスの増殖を防ぐ働きのあるインターフェロンと呼ばれる物質の生成を促進します。また、健康な皮膚や細胞膜に欠かせないコラーゲンの生成を助ける働きもあるため、ビタミンCはウイルスの体内への侵入を防ぎます。これらの作用により、ビタミンCは免疫力の向上に役立ちます。
さらに、ビタミンCは、ストレスに対抗するために必要な副腎皮質ホルモンの生成に欠かせない成分です。ビタミンCが不足するとこうしたホルモンが分泌されず、ストレスへの抵抗力が弱まります。ビタミンCはストレスの緩和にも重要です。
高麗人参にはこうした効果をもつビタミンCが含まれており、身体の健康や美容に役立ちます。
ミネラル
高麗人参には、カリウム・マグネシウム・カルシウム・鉄・銅・亜鉛といった身体に必要なミネラルが豊富に含まれています。高麗人参はこれらのミネラルを身体に補い、身体の健康増進に役立ちます。
カリウム
カリウムには、ナトリウムと反応してナトリウムを身体の外へ排出する作用があります。
ナトリウムは塩を構成する成分で、身体に必要不可欠です。しかし、体内のナトリウムが多すぎると、ナトリウムの濃度を一定に保つために身体が水分を多く保持しようとします。このため、過剰なナトリウムは身体のむくみや高血圧の原因になります。
カリウムは身体の余計なナトリウムを体外に排出して、むくみや高血圧の予防・改善に役立ちます。
マグネシウム
高麗人参には、マグネシウムが豊富に含まれています。
マグネシウムには神経の興奮を抑えて神経の働きを正常に保つ作用があります。このため、マグネシウムは精神の安定とストレス軽減に役立ちます。
また、マグネシウムは骨の材料になるとともに、骨や歯にカルシウムが行き届くように調節する作用もあります。マグネシウムは丈夫な骨や歯の形成に欠かせない栄養素です。
さらに、マグネシウムには動脈を弛緩させて血行を促進する作用があります。この作用によって血流がスムーズになるため、マグネシウムは高血圧の予防・改善にも役立ちます。
カルシウム
カルシウムは骨や歯の主成分であり、丈夫な骨や歯の形成に欠かせません。
また、カルシウムにはストレスを軽減する作用や精神不安を軽減する作用があることも知られています。カルシウムは神経の緊張や興奮を抑えて、精神の安定に役立ちます。
鉄
鉄は、赤血球を構成するヘモグロビンの材料になる重要なミネラルです。鉄分の不足は、最も多い貧血の原因です。
また、カタラーゼと呼ばれる酵素があり、この酵素には活性酸素のひとつ過酸化水素を中和する働きがあります。鉄は、このカタラーゼの生成に必要な成分です。鉄は活性酸素の中和にも役立ちます。
亜鉛
亜鉛は数多くの酵素の働きに関わり、細胞分裂に欠かせません。亜鉛不足の症状には、貧血・生理不順・女性不妊・男性不妊・味覚障害・皮膚炎・免疫力の低下といった数多くの症状があります。亜鉛は身体の健康維持に不可欠な栄養素です。
銅
銅は、亜鉛と同じく数多くの酵素の働きに関係しています。特に赤血球の生成に不可欠な成分として知られ、銅欠乏性貧血という貧血のタイプもあります。
また、銅が欠乏すると、免疫細胞であるT細胞の数や機能が低下します。銅は免疫機能にも欠かせません。
アルカロイド
高麗人参には、アルカロイドも少量含まれています。アルカロイドは「アルカリに似た化合物」という意味で、多くのアルカロイドが強い生理作用をもっています。
コーヒーに含まれるカフェインや、タバコに含まれるニコチン、マラリアの特効薬であるキニーネなどが、代表的なアルカロイドとして知られています。毒性を示すものが多いですが、少量の摂取では身体に好影響を与える場合も多く、薬としても利用されます。
高麗人参に含まれるアルカロイドには、免疫細胞であるマクロファージやBリンパ球の働きを活性化する作用があります。このため、アルカロイドは免疫力の向上に役立ちます。
また、アルカロイドはその名前の通りアルカリ性を示し、細胞の酸化を防ぐ働きがあります。このため、アルカロイドは活性酸素による酸化作用から身体を守り、細胞の老化を抑制します。
なお、高麗人参に含まれるアルカロイドは少量のため、継続的に摂取しても身体に害はありません。
まとめ
高麗人参には高い効果があり、その中心となる栄養素が高麗人参特有のサポニンであるジンセノサイドです。高麗人参にはジンセノサイドのほか、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、アルカロイドが含まれており、これらの栄養素が複合的に働くことによって身体の健康や美容に役立ちます。
丈夫で若々しい身体を手に入れるために、豊富な栄養素を含む高麗人参を、いちど試してみることをお勧めします。
【参考文献】
高麗人参に含まれる成分について
http://zonascottsdale.com/ingredient.html